
SPECIAL DIALOGUE
創立80周年
記念対談
参議院議員
見坂 茂範
一般財団法人
経済調査会
森北 佳昭
参議院議員 見坂 茂範 氏
1993年京都大学大学院工学研究科修了、建設省(現国土交通省)入省。関東地方整備局企画部長、官房技術調査課長、近畿地方整備局長などを務めた。2024年5月に退官。25年7月第27回参院選に職域代表として立候補し、初当選。座右の銘は「全力投球」。兵庫県出身、57歳。
一般財団法人経済調査会 森北 佳昭
1981年京都大学大学院工学研究科修了、建設省(現国土交通省)入省。治水課長、関東地方整備局長、水管理・国土保全局長などを務めた。2014年7月の退官後、水源地環境センター理事長などを経て、21年1月から現職。好きな言葉は「誠心誠意」。奈良県出身、70歳。

日刊建設工業新聞社提供
参議院議員
見坂 茂範
1993年京都大学大学院工学研究科修了、建設省(現国土交通省)入省。関東地方整備局企画部長、官房技術調査課長、近畿地方整備局長などを務めた。2024年5月に退官。25年7月第27回参院選に職域代表として立候補し、初当選。座右の銘は「全力投球」。兵庫県出身、57歳。

日刊建設工業新聞社提供
一般財団法人経済調査会
森北 佳昭
1981年京都大学大学院工学研究科修了、建設省(現国土交通省)入省。治水課長、関東地方整備局長、水管理・国土保全局長などを務めた。2014年7月の退官後、水源地環境センター理事長などを経て、21年1月から現職。好きな言葉は「誠心誠意」。奈良県出身、70歳。
日刊建設工業新聞掲載版(記事・写真提供 日刊建設工業新聞社)
感謝を胸に未来へ
~公正・中立な調査で社会貢献~
経済調査会(森北佳昭理事長)は9月に、創立80周年を迎える。戦後の混乱期に物価や賃金、生活費の実態調査を行い社会に提供したのが始まりで、公正・中立な情報提供を通じて、建設工事の積算業務や適正価格での資材調達に貢献し続けている。80周年という節目を控え、自民党建設産業職域代表の見坂茂範参議院議員を招いて、森北理事長と対談してもらった。
- 森北
- 経済調査会は2026年9月に創立80周年を迎える。建設市場に関わる積算や資材調達のための価格の実態調査を中心とした調査研究と、これにもとづく情報提供事業や普及啓発事業を通して社会に貢献してきた。当会が刊行する「積算資料」等の定期刊行物で情報提供するとともに、講習会やホームページで広く社会に周知している。これらの情報は公共工事の発注の際に活用され、適正価格での公共調達に役立っているものである。戦後の復興期から現在に至るまで、公共調達のあり方も時代とともに変化してきたが、たえず公正・中立な立場で資材価格や労務費等の実態を正確に把握し、その情報を提供する役割を担ってきたと考えている。
- 見坂
- 経済調査会の80年というのは、森北理事長の発言どおり、建設資材の価格を公正・中立に調査して、それを積算資料という形でまとめてきた。それを国や地方公共団体は、工事発注時の積算に使ってきた。官公庁にとっては、なくてはならない存在だったと認識している。昨今、物価上昇傾向が続き、建設資材もその例外ではない。毎月の単価を見ても、上がる方向に変動している。そうした中、適切に市場価格を把握し、行政担当者の発注業務に反映させるという観点からも、経済調査会の役割はますます高まっている。建設省(現国土交通省)に入った頃、現場事務所に配属され、積算業務の部署にいた。先輩職員の指導を受けながら、分厚い冊子の積算資料のページをめくりながら、手書き計算していた頃を思い出す。電子化が進んだ現在では、懐かしい思い出の一つになっている。
社会資本の整備について
- 森北
- わが国は、水害、地震、津波、豪雪など世界に類を見ない災害大国だ。最近は地球温暖化による気候変動で、夏は酷暑、逆に冬は寒く豪雪、雨が降れば集中豪雨、降らなければ渇水などと、気象が極端になっている。昨年も8月には熊本県で線状降水帯による水害、9月には首都圏でも時間雨量100ミリを超える大雨で浸水被害などが発生しており、災害に対する備えが十分とはいえない。道路も、高速道路の暫定二車線区間が多く残されている。東日本大震災では東北自動車道が災害復旧の資材、燃料、生活物資の緊急輸送路として大きな役割を果たした。平時だけでなく災害時も考えてリダンダンシーを確保する必要があると考えている。
笹子トンネル天井板落下事故が発生した翌年の2013年から、社会資本の維持管理、更新にも力が注がれてきた。それにもかかわらず、昨年1月に埼玉県八潮市で下水管の破損が原因とされる道路陥没事故が発生した。このように、わが国のインフラは十分とはいえず、整備を進めていく必要がある。そして、既存インフラのメンテナンス、維持管理・更新も今後、さらに加速していかなければならない。
当会は自然災害発生時、災害復旧資材供給情報を被災地域に迅速に発信するなど、復旧・復興活動を支援する情報提供を実施している。 - 見坂
- 森北理事長の考えと同感だ。わが国のインフラは立ち後れていると認識している。近年激甚化している豪雨災害への備えや老朽化対策いずれも、十分とはいえない。諸外国のインフラと比較しても、国際競争力向上のための道路、港湾などの整備は遅れている。これからの時代のインフラ整備は、国内事情だけで事業を進めるのでなく、グローバルな観点を取り入れる必要があると考えている。高市内閣の『責任ある積極財政、危機管理投資』という観点からも、国際競争力を念頭においたインフラ投資は大事だ。激甚化する豪雨災害に対する備えという観点からも大事だ。併せて、スピード感を持って、インフラ整備を進めることも大事だ。海外と比べて立ち遅れているわが国のインフラについて、建設産業の職域代表国会議員として、自民党内や政権内を鼓舞していきたい。
国土強靱化について
- 森北
- 2023年に国土強靱化基本法が改正され、「国土強靱化実施中期計画」の策定が法定化された。このことは、わが国の防災・減災、国土強靱化を進めるうえで重要な意味を持つ。それまでの3か年緊急対策や5か年加速化対策は閣議決定に基づくものだったのに対して、法律に基づく計画であることは重みがある。今回、第1次中期計画とされているように、第2次、第3次と継続的、長期的、そして計画的にインフラが整備されるという点で大きな意義があるものと思う。当会としては、実施中期計画が着実に進められるよう、資機材の価格や工事費の動向などの実態を正確に把握し、受発注者に情報提供していくことが大事な役割と考えている。
- 見坂
- 国土強靱化実施中期計画の法定化は、大変意義あることだ。インフラ整備に関する中期計画というものがこれまでなかったが、それを法的に位置づけた。今後も2次、3次の実施中期計画という形で、将来の投資額や事業規模の見通しが、国民にも分かる形で示される。第1次実施中期計画は昨年6月に閣議決定され、『概ね20兆円強程度』という事業規模が示された。昨今の物価・資材価格の高騰を見ると、この『強』の部分を大きくしていくことが大事だ。単に5年間で20兆円とするのでなく、『強』の部分をいくらでも大きくしていかなければならない。物価に連動して強靱化予算を確保するというのを政府内のコンセンサスとして、国会の理解を得ながら進める必要がある。毎年どこかで自然災害が起きており、国民の生命・財産を守るという意味で、国土強靱化にしっかり取り組む必要がある。
- 森北
- 実施中期計画が現場で着実に実施されて、地域の安全・安心、ひいてはわが国の防災・減災、国土強靱化に資することを期待している。そのためには、受発注者双方が共通認識を持てる環境づくりが必要だ。そのための情報をこれからも提供したい。
- 見坂
- 国土強靱化は与野党とも、誰も反対しない。それならば補正予算に計上するのではなく、当初予算案に盛り込むべきだと思っている。計画的な予算執行が可能なので、建設業者だけでなく、地方公共団体の職員にも喜ばれる。今般の衆議院選挙でも自民党の公約に入った事柄なので、補正予算でなく当初予算からの計上へと、間違いなくシフトする。ただ、影響の大きな事柄でもあるので、国土強靱化予算の全てをいきなり当初に移行するのではなく、2~3年程度かけて行うべきだと思っている。自民党内でも合意形成を図った上での予算編成となるよう、6月の骨太の方針や、8月末締め切りの概算要求などに反映できるようにしたい。
高騰する資材価格について
- 森北
- 公共事業予算が、資機材価格や人件費の上昇分を補うだけ増えなければ、事業量は実質的に減少することになる。事業量が減れば発注件数が少なくなるので建設会社にとっては受注機会が減少し死活問題となる。地域の守り手である建設会社がなくなれば、災害時などには誰も対応できない。
- 見坂
- 公共投資や農業予算など投資的経費というのは他の予算項目と違って、物価上昇分を加味した予算編成にしなければならない。これを6月の骨太の方針に盛り込もうと考えているが、一筋縄ではいかないので、知恵を絞って取り組みたい。2025年度補正予算は、国交省始まって以来の2兆円を超える大型補正となった。責任ある積極財政を掲げる高市首相になったからといって、お金が増えたわけではないので、予算を裏付ける根拠をさまざま考えた。自民党が政権を取り戻して以降、毎年20億円程度しか増えてこなかった公共事業予算が、2026年度当初予算では前年度を220億円上回ることができた。国交省予算に限定しても、197億円の増加だ。今までの呪縛から逃れ、これを突破口に必要となる予算を確保していきたい。物価変動に連動した公共事業予算、投資的予算をしっかり増やすという形にしなければ、実質的な仕事量、発注件数は目減りする。この状況を、建設業界の総意として各方面から声を上げて欲しい。
どれくらい物価が上がっているのか、資材価格が上がっているのか、事実関係を調査して事実をつかむというのは大事だ。そういう意味で、経済調査会が果たす役割は、いっそう重要性が増すはずだ。 - 森北
- 当会が建設会社に対して四半期ごとに実施している工事受注状況調査では、受注件数が減少しているとの回答が寄せられている。このような実態を継続的に把握するとともに、資機材価格や人件費がどの程度上昇しているのか、それが工事にどう影響しているのかについて、引き続き情報提供したい。
- 見坂
- 森北理事長のいうとおり、今、事業量がかなり減っている。予算が伸びない割に単価が上がっているため、発注件数も減っている。これは単に建設業界にとどまる話ではない。道路の開通やダムの完成が遅れると、開通や完成に合わせて立地しようとしていた企業の計画も後ろ倒しになるなど、地域経済に影響を与える。工事を発注したくても、予算が足りないから、工事が進められないという事情が全国各地から聞こえてくる。インフラ整備は建設業界単独の問題ではなく、地域経済全体に及ぶ大きな話だ。
今後の抱負、建設業界へのメッセージ
- 森北
- これまで長年にわたって培ってきた当会に対する信用、信頼を損なうことなく、社会経済情勢の変化に対応した適正な情報提供を行っていきたい。建設業界の皆さまには、地域の守り手として厳しい環境の中で地域社会を支えていただいていることに敬意を表したい。建設産業が持続可能な形で発展していくことを願っている。
- 見坂
- これからの建設業界を担う若い人に、夢のあるプロジェクトを企画しなければならない。自分が当時の建設省に入ったのは、明石海峡大橋の建設現場を、学生時代に見学したのがきっかけで、日本の建設技術の素晴らしさに魅了された。今の建設業界は、大変な状況かもしれないが、働く人たちに夢のある、やりがいのあるプロジェクトに携わっていただきたい。そのためには、休暇がとれ、給料がもらえるというのが大事。若い人に話を聞くと無理して働いても構わないから給料が欲しいという。給料が上がるようにするには、今以上に利益率の高い業界にならなければならない。経営者の中には、仕事量を重視する方もいるが、私は利益率を高めなければならないと思っている。公共工事だけでなく、民間工事も含めて利益率の向上を後押ししたい。経済調査会の資料は民間工事でも使われている。民間工事や建築工事などでも利益率を確保する産業にすることが大事。職域代表である自分が先頭に立ち、建設業界で働く皆さんと一緒に、明るい未来を目指す。森北 当会は、昨年9月に本部事務所を移転した。創立80周年と事務所移転を機に、社会から信頼される公正・中立な価格調査機関としての使命と役割を果たし、そのプレゼンスを尚一層高めたい。
日刊建設通信新聞掲載版(記事・写真提供 日刊建設通信新聞社)
信頼性ある価格情報を提供
資材価格や工事費、需給状況等の実態調査を行う調査研究および普及啓発・情報提供などを主な業務とする経済調査会は、2026年9月に創立80周年の節目を迎える。発足から現在に至るまでの間、社会の変化に合わせて建設業を取り巻く環境も大きく変わり続けてきた。昨今では、少子高齢化の進行などに伴い、担い手の確保や人手不足の中でインフラをいかに維持管理していくかなどが課題となっている。同会の森北佳昭理事長と、国土交通省OBで建設業界の職域代表として活躍する見坂茂範参院議員に、経済調査会の役割や持続可能な建設業界・インフラの在り方などについて対談してもらった。
経済調査会のこれまでのあゆみについて
- 森北
- 当会は、戦後間もない1946年に前身である東京経済調査会が設立されたところから始まりました。戦災により壊滅的な被害を受けた国土の復興に当たり、建設産業は大きく貢献してきました。深刻な物資不足とインフレの中で荒廃した都市や道路、鉄道などのインフラの復旧・復興に建設業が全力を挙げて取り組む中で、当会は物価・賃金などの実態を調査し、適正な価格を示すことで公共事業の適切な執行を支えてきました。
高度経済成長期には新幹線や高速道路などの交通インフラ、黒部ダムや佐久間ダムなど大規模な電源開発といった数々のビッグプロジェクトが建設産業の技術の粋を集めて実施され、経済成長の実現につながりました。その間、当会は「積算資料」などの定期刊行物を通じて資材の価格や労務費などを公表し、適正な積算基準を確立するための基礎データを提供することで、社会基盤の効率的な整備に貢献してきました。
バブル期には都市の再開発やリゾート開発などが盛んに実施されましたが、その後のバブル崩壊はわが国に多大な影響を及ぼし、建設産業にも大きなインパクトを与えました。当初は景気対策として公共投資が実施されましたが、次第に公共投資抑制やコスト縮減に舵が切られ、事業の効率性が求められるようになりました。そうした中で当会は、作業効率の精細な調査や専門図書の刊行などによって、コスト管理手法の普及に尽力してきました。
現在では、激甚化・頻発化する自然災害への備えや老朽化したインフラの維持管理、深刻化する人手不足への対応が建設業界の大きな課題となっています。当会もそうした状況を的確に把握しながら、調査方法や情報のデジタル化など提供方法のアップデートを進めているところです。 - 見坂
- 経済調査会が長い歴史の中で、その時々に合わせて建設市場における物価を公正中立な立場で調査してきたことは非常に重要です。その成果は積算資料という形で国や地方公共団体といった発注者側に提供され、工事発注に活用されてきました。こうした経済調査会の果たしてきた役割は大きく、発注者側にとってなくてはならない存在だと言えます。特にここ2、3年の物価高騰を考えると、市場価格を正確に捉えることはかつてないほど大事になっています。昨今はできるだけ短期間で調査結果に価格を反映して欲しいという声もあり、それに応えなければならない経済調査会の皆さんはなかなか大変だと思いますが、今後もぜひ頑張ってもらいたいと思います。
政策の側面から見た経済調査会の役割は
- 見坂
- 私は国交省在職時に地方整備局の企画部長も務め、さまざまな実務に携わってきました。そうした経験からも、経済調査会の担う役割は非常に大事だと思っています。工事の不調不落の原因は、発注者側の示した積算額が実勢に合っていない事例が多い。経済調査会にはなるべく迅速に市場価格を把握してもらい、発注者は的確に積算価格に反映させることが大切です。
- 森北
- 公共工事は税金で実施されるため、不当に高すぎることがあってはいけませんし、安すぎて品質や安全性に問題があってもいけません。当会は資材価格や工事費などを公正で中立的な立場から調査し、客観的なデータを発注者に提供しています。発注者はこうしたデータを積算に活用し、実際の市場で取引されている実勢価格に基づいた工事の予定価格を算出しています。
近年の資材価格の急騰や人件費の高騰は、企業の経営を圧迫するとともに、不調不落などでインフラ整備の停滞を招くおそれがあります。それに対して発注者は、契約後の物価変動を契約金額に反映させるスライド条項などの施策を適用しています。当会が実施している毎月の価格調査や特別調査などは、物価変動を契約金額に反映させ建設産業の基盤を守る役割を果たしていると考えています。
さらに、当会が長年にわたって整理・蓄積してきた建設資材の需給動向や価格推移のデータは、政策立案のための重要なマクロ統計資料として活用されています。こうした役割を担えるのは、当会が公正中立な価格調査機関として認められ評価されているからだと思います。 - 見坂
- 私は2022年度に技術調査課長としてスライド条項の運用に携わりました。その当時、建設業界側からは適用について熱心に要望が寄せられましたが、平成以降長らく物価が安定していたため発注者側が制度の運用に対する理解が十分ではありませんでした。そのため、現場の整備局職員も私自身も、経済調査会のデータから非常に多くを学ばせてもらいました。2022年度は急激な価格上昇が生じていましたが、データを見ながら実際の値上がり幅を知り、どの水準を超えたらスライド条項を適用するのかを考えつつ、杓子定規に運用するのではなく建設業界の皆さんが使いやすいようルールの緩和なども検討し、改善を進めました。
予定価格に実勢価格を反映することはもちろん大事ですが、契約後、特に工期の長い事業については、その時々の物価上昇に連動する形で契約変更をすることは極めて大事です。これからも経済調査会には的確に市場価格を把握して発信してもらい、発注者側は柔軟に契約変更やスライド条項の適用などに活用していく必要があります。
担い手不足やインフラ老朽化などの課題について
- 森北
- 技術者不足や技能労働者の高齢化は、建設業界が今まさに直面している問題です。当会が四半期ごとに実施している労務需給調査でも、人手不足は顕著になっています。調査は工種ごとに実施していますが、いずれの工種でも人手不足は共通しており、工期やコストに影響を与えているケースは少なくありません。
労働力の減少を補うためには、一人ひとりの生産性を高める必要があります。政府はi―Construction2・0で建設現場のオートメーション化を推進しており、2040年度には少なくとも省人化3割、生産性1・5倍の達成を目標としています。その実現に必要なDX導入には初期投資やさまざまなコストが生じます。そこで当会は、新技術の積算基準を策定するための実態調査を実施し、DX推進の一助となるよう取り組んでいるところです。 - 見坂
- 担い手の確保には賃金上昇が不可欠だと考えています。今の若い人たちはやりがいだけでは付いてきてくれません。処遇改善の取り組みとして、休暇については週休2日制が浸透して改善してきましたが、給与面はさらに上げていく必要があります。そのためには、一つひとつの仕事の利益率を上げていくべきです。公共工事設計労務単価や設計業務委託等技術者単価は14年連続で上昇していますが、それだけでなく労務費の行き渡りをしっかりチェックして現場で働く人々の給与に反映されているかを確認しなければいけないと国交省に働きかけています。労務費のアップがすみずみまで行き渡り十分な賃金がもらえる仕事だという意識が広まれば、建設業界の魅力アップにつながります。諸経費率や歩掛、仮設費の計上などの見直しについても総合的な検討が必要です。建設業を今以上に利益が得られる産業にしていくことで、これからの若い人たちから選ばれる仕事にすることが政治の役割だと考えています。入職者増加に少しでも寄与できるよう今後も尽力していきます。
- 森北
- 2025年12月には第三次・担い手3法、とりわけ改正建設業法が全面施行されましたが、これに基づいて技能労働者の処遇改善や若手技術者の入職が促進されることを願っています。
処遇改善の妨げとなる無理な安値や工期での受注を防ぐためには、価格やコストの実態などについて客観的なデータの提供が必要と考えています。当会は「労務費に関する基準 特設サイト」を開設しており、情報提供を通じて制度の理解促進と建設業界の健全な発展に貢献したいと考えています。人手不足を補うためには、外国人材の登用も、今後さらに進める必要があるでしょう。 - 見坂
- 日本人が少子化によって減少していく以上、これからの時代は外国人労働者の皆さんの活躍が不可欠です。女性活躍も重要です。コロナ禍を機にリモート技術が発展したことで、家庭で子育てをしながら仕事に参画できるようになるなど、多様な働き方の選択肢が広がっています。既に話題に挙げた給与や休暇などの改善を通じた魅力ある建設業づくりによる若年層の入職促進と合わせて、多様な取り組みを総合的に展開しなければ、今後さらなる人口減少に向かう中で担い手不足は避けられません。
建設産業は日本の基幹産業であり、日本経済の持続的な発展には不可欠な存在です。さまざまな人が働けるよう環境を整えて担い手を確保するとともに、ICT技術による生産性向上など、各種施策を組み合わせることで、建設業の持続可能性を高めていければと考えています。 - 森北
- インフラマネジメントの問題に目を向けると、建設コストだけでなく、維持管理や更新まで含めたライフサイクルコストについても考えなければいけません。受発注者でそれぞれ立場は違っても、インフラを長く安全に使い続けるという目的は同じです。そのために、実態に合った価格や工期を、どのようにインフラマネジメントへ反映するかが重要です。
国民の財産であるインフラを守るために、発注者には建設産業の育成を、受注者には技術によって社会に貢献することを使命としてもらい、その間に公正中立な当会が介在することで三位一体のパートナーシップが構築され、持続可能なインフラマネジメントが可能になるのではないかと考えます。 - 見坂
- インフラはつくるだけでなく維持管理を含めたマネジメントがますます重要となっています。地方公共団体、特に市町村は技術者不足が課題となっており、これからの発注業務をどのように担っていくべきかは深刻な問題です。複数自治体のインフラや複数分野のインフラを「群」として捉えて、効率的で効果的にマネジメントする「群マネ(地域インフラ群再生戦略マネジメント)」のような手法は有効な取り組みの一つです。これからの時代、全てのインフラを残していくことは難しくなっていきます。自治体の首長は残すべきインフラを取捨選択することも必要となるでしょう。
DX・GXなど新技術の活用について
- 森北
- 私は国交省在職時に、技術調査課で新技術活用の導入に担当者として携わっていたこともあり、DXをはじめとした新技術の重要性を強く感じています。国は2023年度から直轄工事・業務においてBIM/CIMを原則適用とし、設計から施工、維持管理までを3次元モデルで一元管理することにしました。単なる効率化だけではなく、限られた人材で生産性を向上させるとともに品質を確保するための手段であり、現場の負担軽減につながる施策だと思います。当会も新技術の歩掛などさまざまな調査を通じて、現場活用の一助となるべく取り組んでいきます。
- 見坂
- 今後さらに深刻化する人手不足に対応するためには、デジタル技術による生産性向上は不可欠です。多少初期費用がかかっても、新技術を取り入れた方が効率的な場面もあります。実務を経験したことがある国会議員として、DXや新技術の活用を時代に合わせた形でどんどん後押ししていきたいと思っています。
GXの推進も建設産業にとって重要な課題です。災害の激甚化は温暖化など地球環境の変化によるところが大きく、グリーンイノベーションはとても大事になっています。建設産業が環境負荷軽減に貢献できる分野は、材料の製作から現場の施工、維持管理まで幅広くあります。DXについてもGXについても政府として後押ししてもらいたいと思いますし、政治の場でも関連政策を推進していきます。 - 森北
- GXや脱炭素などの環境負荷低減に向けた取り組みは、現場で実行可能な形で進めていくことが大切です。当会では、サステナブル経営推進機構(SuMPO)の賛助会員として、SuMPO EPD(製品環境宣言)登録製品の最新版を積算資料やホームページで紹介するなど、環境負荷低減に関連した情報の提供に取り組んでいます。今後も引き続き、さまざまな情報を定期刊行物やホームページなどで発信し、建設産業の環境面の課題解決に役立ててもらえるようにしたいと考えています。
建設業界で働く人々や次世代の担い手に向けたエールをお願いします
- 見坂
- 建設業界の未来を見据えて考えると、若い人たちが夢ややりがいを抱いて取り組めるプロジェクトが必要だと思います。私が建設省(当時)に入ったのも、学生時代に明石海峡大橋の建設現場を見学し「日本の建設技術はなんてすごいのだろう」「自分も将来こんな仕事に携わりたい」と考えたことがきっかけでした。そして入職者を確保するためには、休暇が取れて十分な給料がもらえるようにすることが第一です。若年層の話を聞くと、多少無理して働いてもちゃんと給料が欲しいという声を耳にします。そのためには、建設業界を今以上に、公共工事だけでなく民間工事も含めて、利益率の高い業界にしていかなければいけません。経済調査会が作成している資料は公共工事はもちろん民間工事にも役立つ資料となっています。私も建設業界の職域代表として先頭に立って引き続き尽力していきますので、建設業界の皆さんも明るい未来を目指して一緒に頑張っていきましょう。
- 森北
- 建設産業は社会基盤の整備を通じて、国民の生命財産を守り、生活の利便性を高めるなど、重要な使命と役割を持っています。かつては3K(きつい、汚い、危険)産業と言われていましたが、今ではDXやGXなどの施策によってスマートでクリエイティブな産業に変わってきており、新4K(給料が高い、休暇が取れる、希望が持てる、かっこいい)を目指して業界をあげて取り組まれているところです。当会としてこうした建設産業の状況や意義を広く情報提供し、次世代の若者によく知ってもらいたいと考えています。建設産業は厳しい時代もありましたが、そうした環境の中でも地域を支え続けていただいています。ある意味「利他業」的な仕事であり、従事されている皆様には深く敬意を表します。
当会は創立80周年の節目を迎えるとともに、昨年9月には本部事務所を移転しました。これらを機に、より社会から信用される公正中立な価格調査機関としての使命と役割を果たし、そのプレゼンスをなお一層高めていきたいと考えています。今後も建設産業が持続可能な形で発展し続けるために、80年にわたって築き上げてきた信頼や信用を損なうことなく、社会情勢に応じた適正な情報を提供していきます。

